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『同一労働同一賃金』の議論について

一昨日、9月27日(火)に政府による『働き方改革実現会議』の初会合が行われました。ニュース等々でも取り扱われておりましたし、事前に様々な情報が報じられていましたので、ご存じの方も多いこと思います。

今回はこの会議が話し合うこととされている9つの項目の内、特に話題になっている二つのテーマについて書き立ちと思います。

これから来年の3月を目途に何らかの答申が出されるものと思いますが、このニュースをご覧頂く際の基本的知識をご理解頂けますと幸いです。まずは同一労働同一賃金についてです。

Ⅰ『同一労働同一賃金』について

正直なところ、政府や政治家は分かっていない!!

今回の会議において、話し合われることとされている9項目の内、一番最初に書かれている『同一労働同一賃金』ですが、少し勉強した方ならば、本来は『同一価値労働同一賃金』という文言を使うべきだということが分かるはずです。

その点から「政府、分かってないなぁ…」と弊所は思ってしまう訳です。(偉そうで申し訳ございませんが)

問題となるのは以下の2点です。

①非正規雇用者と正規雇用者の賃金格差には合理的な理由がある

②パートタイマーについては既にパートタイム労働法において規制があるが、これ以上何をしたいのか?

③同一労働ってなに?

 

①非正規雇用者と正規雇用者の格差には理由がある

労働時間や責任が6割程度だから

皆様、正直『同一労働同一賃金』という言葉をお聞きになられて、どのようなイメージをお持ちになりますか?

政府は今回の会議を経て、非正規雇用者の賃金を正規雇用者の7~8割に引き上げたい(現状は6割)とのことですが、そもそも正規雇用者が非正規雇用者よりも手厚く保護されるのは当然なのではないでしょうか?(誰も言いませんが…)

勿論、ワーキングプア問題や消費不足など政治的課題を解決したいという社会問題としての側面は分かります。ただ、弊所は『非正規雇用者が正規雇用者よりも賃金が6割程度になっている現状』にはそれなりの合理的な理由があると考えております。その理由は…

 

企業に拘束されている時間(労働時間)や責任が6割程度だから

です。

政府や政治家はこの点を忘れているのではないでしょうか?。

労働時間と賃金額を結びつける概念が古いという意見は勿論承知していますが、企業として使用出来る時間も評価の一つのファクターであるはずです。また、拘束時間が長いことと責任の重さは比例関係に概ねなります。(短時間勤務の方でも大きな責任を持って働いて頂くような企業運営が今後は大切になることは承知しておりますが)

従って、労働時間が短ければ、それなりに賃金が減額されることは当然の論理です。

現に昨年パートタイム労働法が改正された際、『仕事の種類や責任度合いが同じ場合は賃金について同一評価をすること』とされましたが、労働時間が異なる場合は時給換算で同額であれば構わないとされました。つまり、あの時点では政府も『労働時間の多寡によって賃金総額が異なることはあり得る』と認めていたはずです。

その点も踏まえると、現在、我が国の非正規雇用者の多くが週18~24時間程度での働き方をしている方が多い実態と合わせた時、非正規雇用者の賃金が正規雇用者の6割程度であることには筋が通るというのが弊所の意見です。

それにもかかわらず、1年ちょっとぐらいで考え方を簡単に変えたのでしょうか?正直、これをどのように8割に上げていこうというのでしょうか?

②パートタイマーについては既にパートタイム労働法において規制があるが、これ以上何をしたいのか?

既に法律施行済みであり、また実際を考えると矛盾を感じざるを得ない

先に記しましたが、実は昨年改正されたパートタイム労働法において、仕事の種類や責任が同じ場合には時給換算で同様にするように法整備は既になされています。

勿論、このことをまだご存じない企業様もいらっしゃるかもしれませんので、実態が法律に対応し切れていない面はあろうと思います。ただ…

これ以上、何をするのでしょうか?

その意味で今後の働き方改革実現会議の動向を注視しておりますが、まさか

正規雇用者⇒⇒週40時間労働 月給250,000円

非正規雇用者⇒週24時間労働 時給1,938円

にしろなんてことは言わないですよね…。

この場合非正規雇用者の賃金は確かに8割になります。

1,938円×週24H×4.3週=200,002円

しかし、逆に正規雇用者を時給換算すると

250,000円 ÷ 172時間(週40×4.3週) =1,454円!!!!

要は非正規雇用者への差別を解消することが正規雇用者への逆差別になっちゃったりする訳です。

弊所としても時給換算で均等に取り扱うべきであるとは考えております。従って昨年改正のパートタイム労働法の考え方は理解出来る訳です。従って、

正規雇用者⇒⇒週40時間労働 月給250,000円

非正規雇用者⇒週24時間労働 月額150,053円

が正しいと考える次第です。(時給1,454円×週24時間×4.3週=150,053円です)

でも、150,053円 / 250,000円 =60.02%

で、ちょうど6割です(笑)

政府はこれを認めないつもりなのでしょうか?

③同一労働ってなに?

同一労働の定義は本来は『同一価値労働』のことである

同一労働同一賃金のことを勉強すると、上記の通り、『仕事が同じならば同じ賃金』という概念には大いに無理があることにすぐに気づきます。つまり、『同一労働同一賃金』という文言事態が誤りであるということです。冒頭に「政府や政治家が分かっていない」と書いたのはその為です。

そこで労働経済学的に言われるのが『同じ価値の労働をしている場合には同じ賃金を』という考え方です。つまり『同一"価値”労働同一賃金』です。これには弊所も賛成です。

皆様ご承知の通り、日本の労働時間は世界的に見ると異常な長さです。

それによって様々な損失が発生していますので、その点については何らかの手立てをしないといけないと思います。その為には『最低賃金×労働時間』をベースとして定まっている現状の非正規雇用者の賃金概念を『仕事の価値(1時間単価)×労働時間』に変えていくは望ましいと考えます。

その意味で『同一価値』をどのように定義づけるのか?という点は注視し、期待しております。

単純に賃金総額を8割に上げることだけを押し通そうとすると、前述の通りの逆差別が発生するだけになりますので、議論がこのレベルまで深まることを期待しております。

東大の水町先生が会議のメンバーに含まれていますので、大丈夫だとは思いますが…。

まとめ

仕事の価値の定義付けをどのようにするのか?にかかっている

以上で本稿を終わりますが、結論的には『その仕事の価値』を定義づけることが出来るかどうかによって、この議論がお題目だけになるのかどうかが決まります。

では『仕事の価値』はどうやって決めるのでしょうか?

それは世間相場によって決まるということです。

『同一”価値”労働同一賃金』とは世間が『この価値の労働であれば、このぐらいの賃金』という相場を共有し、それによって賃金を決定することに他なりません。

しかし、これまでも日本の企業は世間相場を最も重要な決定ファクターとしてい賃金を決定してきましたから、これ自体は何も変わりません。

問題になるのは世間相場と合わせて我が国で用いられてきた『会社による賃金格差』であると考えます。

昔から日本においては仕事中心の労働市場ではなく、会社中心の労働市場でしたので、会社によって仕事の価値が異なるということが当然のものとなっています。中小企業よりも大企業の方が賃金が高いなどです。(正直、そんなに仕事の価値は異なるのでしょうか?)

 

『同じ価値の仕事をしている者は等しく同じ賃金を受けられる』ということを目指すのであれば、この点にメスを入れる必要があるのがこの『同一価値労働同一賃金』の議論です。

そのことに政府や政治家は気付いているのでしょうか?

欧米では歴史的にギルド制による職業組合が値段を決定し、その職業に従事する人たちの得られる報酬額には一定の基準レベルがありました。従って、仕事の価値に社会のコンセンサスがあります。

しかし、日本での組合は会社組合でしたので、いまだに会社ごとに仕事の価値が異なる訳です。従って、日本において仕事の価値に社会のコンセンサスを設定することは大きな大改革になる訳です。

もしもこれが上手くいくようであれば、労働市場の流動化も実現されるようになりますし、逆に賃金に対する納得感も高まり、働く人々のモチベーション維持にも繋がり、長く同じ会社で働く方向性も出てくると思います。いずれにしても良いことです。

 

以上、本稿が今後のニュースをご覧になる際の一助になれれば幸いです。

ご不明な点がございましたら、いつでも弊所にご連絡頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。

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