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社会保険労務士 笠置進一事務所

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解雇の実務について
労基法 第19~21条、労契法 第16~17条

今回のテーマは『解雇』についてです。最初にお断りしておきたいのは以下の点です。

  • 本稿は会社側の視点で文章を進めさせて頂きます
  • ただし、労働者側から見た場合でも内容は変わりません
  • 労働者の生活の糧を奪うことになる解雇を推奨することは目的としていません
  • 解雇は法律上認められているものであり、正しい形で行われることを望んでおります
  • 正しい手続きを経ずに解雇された労働者の方については、弊所にご連絡頂ければお力になれるはずです

解雇のやり方(労働基準法第20条)

解雇する為には必要な手続きがあります!!

さて、本論に入りますが、企業が労働者を解雇しようとした場合、労働基準法では以下いずれかの「手続き」を経ることが求められています。

  1. 退職日の30日前までに予告をする(解雇予告)
  2. もしくは、30日分の賃金を支払う(解雇予告手当)
  3. 「1」と「2」の併用(解雇予告手当を支払った分の日数だけ退職日を早めることが出来る)

1、2、もしくは3のいずれかが労基法では求められています。つまり、

「明日から来なくていい!!!」

という解雇を行った場合には、「2」の30日分の賃金を支払うことが必要になるということです。

この30日分の賃金のことを解雇予告手当と言います。

なお、解雇予告手当を支払わずに解雇を行った場合には労働基準法違反となります。

逆に解雇予告手当を貰わずに解雇された労働者の方は解雇予告手当を請求することが出来るということになります。

※ただし、解雇予告手当が払われていない場合でも、解雇の効力そのものは否定されるものではありません。解雇予告手当が支払われていないことは手続き上のミスですので、労基法違反は問われますが、解雇が無かったことにはなりません。

解雇予告手当はいくらなのか?(労働基準法第12条・20条)

解雇予告手当の計算方法

それでは、解雇予告手当とはどのぐらいの金額が必要になるのでしょか?

解雇予告手当は『平均賃金の30日分』の金額とされています。(労基法第20条)

そして、平均賃金とは

『解雇予告日前、3ヶ月間に支払われた賃金 ÷ その3ヶ月間の暦日数』

のことを言います。(労基法第12条)

実務上では、ほぼ「平均賃金30日分の解雇予告手当≒月給金額」とお考え頂いて構いませんが、実際に支払を行う場合にはきちんと計算をしてください。

※3ヶ月間の歴日数」が2月(28日)+3月(31日)+4月(30日)=89日である場合、法律が求める金額を下回ることが発生する為です。

解雇の予告が不要な場合(労働基準法第20・21条)

次の場合には解雇予告が不要となる=すぐに解雇が出来る!!

ただし、次の場合には解雇の予告をしなくても良いとなっています。つまり、解雇予告手当を支払わずに解雇することが出来るということです。

  1. 天災事変その他やむを得ない理由によって、事業の継続が不可能となった場合
  2. 労働者に解雇されても仕方ない理由がある場合
  3. 通算雇用期間が1箇月以内の日雇い労働者を解雇する場合
  4. 2ヶ月以内の契約期間で働く労働者をその契約期間内に解雇する場合
  5. 4ヶ月以内の季節的業務で雇用する労働者をその契約期間内に解雇する場合
  6. 試用期間中の労働者を雇い入れから14日以内に解雇する場合

ただし、「1」及び「2」の場合には所轄労働基準監督署の認定が必要になります。

「3」から「6」の場合は所定の期間を超えていた場合には解雇予告又は解雇予告手当が必要となります。

 

それでは、次に労働基準監督署の認定はどのような基準で判断されるのでしょうか?

労基署の除外認定の基準①

天災事変その他やむを得ない理由によって、事業の継続が不可能となった場合

こちらは以下2つの条件が“どちらも揃っている”場合に認定されるとされています。

  • 天災事変その他やむを得ない理由が発生していること
  • その理由の為に事業の継続が不可能となっていること

つまり、ただ単に天災事変が発生しただけでは足りず、その為に事業の継続が不可能な状態に陥っている場合にのみ解雇予告が不要になるということです。

同じように、事業の継続が不可能な状態であったとしても、その理由が単に経済的理由だけでは解雇予告が必要になるということです。

後ほど述べる「解雇出来ない期間」の除外認定も同様の基準です。

労基署の除外認定の基準②

労働者に解雇されても仕方ない理由がある場合

実務上、最もクライアント様が気になさる点の一つです。

「解雇したい」と弊所にご連絡くださるクライアント様の多くは、『好きで解雇しているとは限らない』と感じることが多々あります。ほとんどの場合、会社が解雇したい労働者というのは、『会社側から見たとき、何らかの問題がある』のが常です。

従って、「2.解雇されても仕方ない理由」がある!!とお考えになることは自然なことです。

以下が認定基準です。

  1. 事業場内で窃盗、横領、傷害等重大な刑事事件を起こした場合
  2. 事業場外で窃盗、横領、傷害等重大な刑事事件を起こし、会社の名誉もしくは信用を失わせ、取引関係に悪影響を与えると認められる場合
  3. 賭博や風紀を乱す行為を事業場内で行った場合
  4. 賭博や風紀を乱す行為を事業場外で行い、会社の名誉もしくは信用を失わせ、取引関係に悪影響を与えると認められる場合
  5. 入社時に採用する為に必要であった条件を経歴詐称した場合
  6. 入社時に会社が知っていたのであれば、採用しなかったであろう経歴を詐称したり秘匿した場合
  7. 既に他の会社で働いている場合
  8. 2週間以上正当な理由無く無断欠勤し、出勤の催促に応じない場合
  9. 出勤不良で欠勤が多く、数回にわたって注意をしても改めない場合

しかしながら、労働基準監督署の認定基準はそれほど甘くなく、上記の条件に当てはまれば、即オッケーという訳ではありません。

実際に個別のケースを調査して判断しますし、基本的に労働者保護を目指している労基署が「解雇予告手当を支払わなくても解雇して良い」という重大な決定をするぐらい高度な理由が必要になるとお考え下さい。

実務上は「7」か「8」の場合で「『退職の意思確認が出来ない』場合に解雇して雇用契約を終了する為に用いられることが多いとお考え下さい。

「9」についてはよくお問合せを頂きますが、はっきりとした基準は示されていないのですが、かなりの回数が必要になるとお考え下さい。

解雇が違法かどうかの判断基準(労働契約法第16条)

適法な解雇を行う為に!!

解雇の手続きが上記の法律に則っていた場合、次に問題になるのが『解雇そのものが正しいのかどうか?』ということです。

解雇は過去の裁判例によって、以下の基準で「違法か否か?(正確は無効かどうか?)」が判断されてきた歴史があります。労働契約法第16条はその内容を文章にしたものです。

判断基準は以下の通りです。

  1. 客観的な理由があるのか?
  2. その理由で解雇することは論理的に正しい言えるのか?
  3. 社会通念上、解雇が相当である(解雇してもやむを得ない)と考えることが妥当であるか?

 

実務上は以下の点を考える必要があります。

  • 就業規則に「解雇することが出来る理由(ケース)」が書かれており、その理由によっての解雇であるか?(就業規則への該当性)
  • 解雇は労働者の生活の糧を奪うものであり、解雇されても仕方が無いと言えるほど悪質な状態であるのか?(相当性)

なお、「会社が期待した程のパフォーマンスが発揮されず、能力が不足しているから」という理由で解雇したいと仰る社長様がいらっしゃいますが、日本の法律では「パフォーマンスが発揮されないのを労働者のみの理由には出来ない」という観点から、

解雇理由として認められる為には「複数回に渡る教育指導」が不可欠となっています。

社会通念上、解雇しても仕方ないという判断がなされる為にはハードルが高いとご認識下さい。

また、会社の業績が悪くなった場合に行う解雇は「整理解雇」と言われますが、整理解雇の場合には労働者保護の観点から、より高いハードルが課せられています。詳細は後日別の回に記させて頂きますが、すぐにお知りになりたい方は弊所までご連絡頂ければ幸いです。

有期雇用労働者の場合(労働契約法第17条)

期間の定めがある契約をしている場合

ここまでのお話では主に正社員(雇用契約期間が定められていない社員)を念頭にお話を進めて参りましたが、今日多くの方々が契約社員やパート(アルバイト)など『契約期間がある』働き方をされています。

それら、期間を定めて雇用している労働者(いわゆる有期雇用労働者)を契約期間の途中で解雇する場合にはさらに高いハードルが課せられています。

雇用期間は重大な労働条件の一つですので、雇用契約を結んだ時に会社と労働者の双方が合意した「大切な約束」であるというのが法律の考え方です。

従いまして、その約束を一方的に破ることは許されることではなく、解雇または労働者が自主退職する場合には「やむを得ない高度の理由があること」が求められます。

本稿はあくまで解雇の話しですが、実は『労働者側が期間の途中で退職するということも同様である』ということもご承知おき頂けると、法律上の雇用契約という考え方を理解しやすくなります。

解雇できない期間(労働基準法第19条)

労働者が以下の期間中の時は解雇出来ません
  • 仕事を原因とするケガや病気で休んでいる期間とその後30日間
  • 産前産後休暇期間とその後30日間

ただし、労働基準法第81条に定められている「打切補償」をした時や、天災事変その他やむを得ない理由の為に事業の継続が不可能となった時(前述の解雇予告の除外と同様。労基署の認定が必要)には解雇することが出来ます。

 

以上、いかがでしたでしょうか?ご不明な点がございましたら、いつでも弊所にご連絡頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。

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